2022年シーズンの大谷翔平の打撃成績の展望と結果
目次
プラス要因
大谷ルール導入による打席数増加
2022年シーズンから、先発投手が降板後もDHで打者として出場し続けられるという、いわゆる「大谷ルール」が導入されます(※1)。「大谷ルール」は、2021年のMLBオールスター・ゲームで初めて実施されたもので、「大谷ルール」という言葉もこのときに生まれました。大谷選手の存在がMLBのルールさえ変えてしまうのか、と当時も大きな話題になりました。
2022年からは、レギュラーシーズンで一年を通してこのルールが適用されます。このことにより、2021年シーズンよりも打席数が増え、ホームランなどが増えるのではないかと予想されています。
2021年シーズンまでは、投手から降板した後も打席に立つには、守備につかなければいけませんでした。実際、下記の試合では、降板後にライトの守備につくことで、打席に立つことができました。
- 5月11日 アストロズ戦
- 5月19日 インディアンス戦
- 6月11日 ダイヤモンドバックス戦
- 7月19日 アスレチックス戦
- 8月8日 ドジャース戦
しかし、162試合という長いシーズンを通して二刀流を維持するには、肉体的負担が大きいため、残りの49試合では、降板後に守備につくことはありませんでした。
実際の打席数
それでは、実際には「大谷ルール」によってどのくらい打席数が増えたのでしょうか。2022年シーズンは合計で666打席ありましたが、そのうち、大谷ルールによって打席に立てたのは、21打席(666打席に含まれる)でした。確かに打席は増えたのですが、思ったより割合は大きくなかったという印象です。
2021年シーズンで見ても、実際の打席数は639に対して、大谷ルールがあったと仮定したときに増える打席数は33なので、こちらもそれほど大きくありませんでした。
2021年 | 2022年 | |
打席数 | (実績)639 | (実績)666 |
大谷ルールによる打席数 | (仮定) 33 | (実績) 21 |
合計 | (仮定)672 | (実績)666 |
ナショナル・リーグでのDH制導入による打席数増加
2022年シーズンから、ナショナル・リーグでもDH制が導入されます。
2021年シーズンは、ナショナル・リーグとの試合が18試合あり、そのうち、下の表の通り、8試合がDH制なしで行われました。この8試合で打席に立ったのは計11回です。1試合だけは、投手かつ2番打者として出場し、4回打席に立ちましたが、残りの7試合はすべてピンチヒッターで1回ずつしか打席に立てませんでした。
打席1 | 打席2 | 打席3 | 打席4 | |||
2021/05/31 | ジャイアンツ戦 | 9回表PH | 四球 | |||
2021/06/11 | ダイヤモンドバックス戦 | 2番先発 | 内野ゴロ | 二塁打 | 内野ゴロ | 二塁打 |
2021/06/12 | ダイヤモンドバックス戦 | 8回表PH | ヒット | |||
2021/06/13 | ダイヤモンドバックス戦 | 8回表PH | 三振 | |||
2021/08/06 | ドジャース戦 | 10回表PH | 敬遠 | |||
2021/08/07 | ドジャース戦 | 8回表PH | 三振 | |||
2021/08/08 | ドジャース戦 | 8回表PH | 四球 | |||
2021/09/07 | パドレス戦 | 8回表PH | ヒット |
DH制ありで行われた試合で大谷翔平が打席に立った回数は、平均で4.186回でした(150試合で628回)。DH制無しの8試合が、もしDH制ありで行われていたと仮定すると、合計で33.493回打席に立てていたことになります。実際は11打席だったので、ここで打席に立てる機会が22回増えることになります。
ナショナル・リーグでのDH制導入によって、「大谷ルール」と同じくらい、打席数の増加が見込めると分かります。
敬遠の減少
2021年シーズンは、下の表のように、打撃の主力選手達の相次ぐ怪我(※2)で、大谷翔平と無理に勝負せずとも済んだ、歩かせればよかった、と言われていました。大谷翔平の打席までにランナーが溜まっていたり、後続にも強打者が続いていれば、大谷翔平と勝負せざるを得ないのですが、そういう状況になかったのです。
一方2022年シーズンには、他の打撃の主力選手の復帰により、大谷選手に対する四球、敬遠が大幅に減ることが予想されています。
2021年年俸 | ||
トラウト | 3712万ドル | 2021/05/18から右脚の故障で故障者リスト入り |
アルバート・プーホルス | 3000万ドル | 2021/5/13に解雇 |
アンソニー・レンドン | 2807万ドル | 2021/07/04に左ハムストリングスの張りで途中交代 |
ジャスティン・アップトン | 2470万ドル | 2021/06/23から腰痛で10日間故障者リスト入り |
デクスター・ファウラー | 1650万ドル | 2021/04/10から60日間故障者リスト入り |
実際の四球の数
それでは、実際にはどのくらい四球、敬遠が減ったのでしょうか? 下の表の通り、敬遠の数はそれほど変わりませんでしたが、四球の数は大幅に減りました。
2021年シーズン | 2022年シーズン | 増減 | |
四球 | 96 | 72 | -25.0% |
敬遠 | 20 | 14 | -30.0% |
大谷翔平の四球、敬遠は減ったのですが、2022年シーズンも、多くの選手が怪我に悩まされました。トラウトは119試合出場し、打撃成績もよかったのですが、レンドンやアップトンは二年連続でほとんど試合に出られていません。
打撃成績でも異次元の活躍を見せている大谷翔平ですが、出場試合数だけを見ても、二年でただ一人300試合を超えており、コンディションの維持という点でも群を抜いていることが分かります。
2021年シーズン | 2022年シーズン | |
大谷翔平 | 155試合 .257 46本 | 158試合 .273 34本 |
マイク・トラウト | 36試合 .333 8本 | 119試合 .283 40本 |
テイラー・ウォード | 65試合 .250 8本 | 135試合 .281 23本 |
ルイス・レンヒフォ | 54試合 .201 6本 | 127試合 .264 17本 |
マックス・スタッシ | 87試合 .241 13本 | 102試合 .180 9本 |
アンソニー・レンドン | 58試合 .240 6本 | 47試合 .229 5本 |
ジャスティン・アップトン | 89試合 .211 17本 | 17試合 .125 1本 |
デビッド・フレッチャー | 157試合 .262 2本 | 61試合 .255 2本 |
ジャレッド・ウォルシュ | 144試合 .277 29本 | 118試合 .215 15本 |
ジョー・アデル | 35試合 .246 4本 | 88試合 .224 8本 |
マイナス要因
公式球の変更
2021年シーズンまでは、飛ぶボールと飛ばないボールが使われていましたが、2022年シーズンからは、飛ばないボールだけが使われるようになりました。2022年シーズンでは、2021年シーズンに比べ、ぎりぎりホームランになる強さの打球で、打球の飛距離が約1.3メートル飛ばなくなった(※3)とのことですが、もっと飛ばなくなっているのではないかと思います。
2022年シーズンの序盤(4月の時点)で既に、ホームランが2021年シーズンより27%も減りました(※4)。
その他の変化
ここまで、プラス要因とマイナス要因とに分けて、2021年シーズンと2022年シーズンとを比較して来ましたが、それ以外の違いについても挙げておきます。
バットの変更
毎シーズン、バットの変更を行っている大谷翔平ですが、2022年シーズンを前に、芯を手元寄りに広くする変更を行いました。大谷翔平は「ちょっと吸い付くというか、気持ち柔らかいというか、ひっつくような感じかなと思いますね。」と語っています。
これがプラスに働くのか、マイナスに働くのかが私には分からなかったので、「その他」として挙げました。
これまでのバットの変更
2020年シーズン:アオダモ材(柔らかい。打つときのしなりのある感覚が特徴)
2021年シーズン:バーチ材(硬い。メイプルとアオダモとの間の硬さ。メイプルで同じ重さにすることは難しい)。「弾き返すような感覚に変えたいが、バットの重さは変えたくない。」
参考文献:
※1:MLBで採用された“大谷ルール”とは?(週刊ベースボールONLINE)
※2:総額151億円!年俸上位5選手を欠いた”格安打線”エンゼルス、大谷の誕生日を勝利で祝えず(Yahoo!ニュース)
※3:MLB今季は「飛ばないボール」で本塁打激減 芯材の毛糸の巻き方緩め反発低下&保湿器管理(日刊スポーツ)
※4:MLBは“飛ばないボール”で投高打低に拍車 打率は1968年以降で最低、本塁打も激減(Full-Count)
※日付はすべて現地時間です。
※MLBでの成績は BASEBALL REFERENCE を参照しました。
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